2017年1月29日日曜日

Elekit TU-8340 (2) 製作中

TU-8340の梱包を開けて最初に目につく大きな部品は、幅40cmを超える大きなプリント基板です。



いくつか小さな基板を切り出して組み合わせるのですが、主基板だけでもかなり大型です。取扱説明書に従うと、最初に作るのは小さなボリューム基板です。


主基板との接続のために、スズメッキ線を用いるようになっています。次に、出力端子のサブ基板。これは取付ナットを締めるだけです。




主基板にパーツを取り付けるのが、組み立て作業の主要部分になります。特に抵抗を間違えないように、慎重に回路図を追いながら作業をしましたが、数時間で終わりました。主基板は、サイズの大きさに比べて部品数は多くないので、回路規模の割に、あまり部品数が多くは見えません。これは部品面ですが、完成すると裏になります。



真空管が付く表面は、このような感じです。4個のタイトUSソケットと、4個のプラスティック・モールドの9ピン・ミニチュアソケットが見えます。ミニチュアソケットは、歴史と実績のある、QQQブランド(もと中央無線、いまはテクニカル電子)のものです。USソケットの手前に、バイアス状態表示用の3色LEDが付けられているのが見えます。


アンプ(右チャンネル)部分のクローズアップです。0.47μFという大容量のフィルムコンデンサーがカップリングコンデンサーとして8個使われています。パナソニックのポリプロピレン・コンデンサーのようで、高品質なものです。特別な部品は多くありませんが、2段目のカソードのデカップリングコンデンサーは固体半導体コンデンサーが使われています。抵抗はほとんどすべて1/2W、5%級のカーボン抵抗ですが、抵抗値を測ってみると、概ね誤差1%以内に収まっています。出力管の電流検知用の抵抗だけは、念のため1%級の金属皮膜抵抗に交換しました(やや大型です)。奥に見える黒い箱はリレーで、UL接続と三極管接続の切り替えに用いられています。



電源部のクローズアップです。大型のブロックコンデンサーは450V220μFで、両チャンネルそれぞれに用いられています。電解コンデンサーは、すべて国内メーカーの105℃品が用いられており、信頼性重視の設計に見えます。整流回路は2系統(B電源と電源増幅段のヒーター)あり、どちらにも1000V4A規格のブリッジダイオードが用いられています。バイアス回路には、ヒーター電源から電源が供給され、自動バイアス調整基板上で負電圧に変換されているようです。手前には、B電源のリップルフィルターに用いられるパワーMOS-FETが4個見えます。それぞれのFETの向こうに見える小さな部品はツェナーダイオードで、半導体素子の保護用にツェナーダイオードが多用されています。一番手前のスイッチは、UL接続と三極管接続の切り替えスイッチです。



AC電源入力部は、別の小さな基板になっています。ACインレットから電源スイッチまで基板になっており、ケーブル配線をしなくていいように配慮されています。複数のコネクターパターンが基板に用意されているのは、複数の電源電圧に対応するためです。


ケースにこれらの基板を組み込むと、ほぼ完成です。



中央に見える紫色の基板が、自動バイアス調整用のサブ基板です。これは完成品で供給され、カバーの基板も付いているので、内部の回路は見えません。ブラックボックス状態です。

ケースへの組み込みで気づいたのは、ケースが頑丈で重量級なことです。組み込むトランスが重いからだと思いますが、カバーまで含めると、ずいぶん重量があります。素材は鉄なのですが、厚さをノギスで測ったところ、1.7mmくらいありました。また、ナットが全く用いられていない代わりに、Sタイトネジという、タッピングビスの一種が多用されています。これを厚い鉄シャーシにねじ込むには、けっこう力が必要です。最初は普通のドライバーで頑張っていたのですが、途中からは、電動ドライバーを用いることにしました。一度ねじ込んでタップが切られれば、それ以降は普通のドライバーで大丈夫です。

あとは、トランス類を組み込んでカバーを付け、真空管を差して調整を済ませれば完成です。

2017年1月21日土曜日

Elekit TU-8340 (1) 回路図からの考察

2016年11月末に発売された、エレキットの真空管アンプキット、TU-8340を入手しました。エレキット初のプッシュプル真空管アンプキットということで、期待の大きい製品です。回路図は公開されていないので、例によって、まずは回路を見るのが最初の楽しみ、ということになります。

回路構成の概略を(回路図を出さずに)説明してみます。出力段はEL34/6CA7のプッシュプルで、UL接続と三極管接続を切り替えられますが、UL接続をメインと考えているようです。切り替えはリレーを用いています。プレート電圧は370Vとやや低め、プレート電流の設定は60mAくらいのようなので、少し低電圧、高電流寄りの動作点です。出力管を変更しても、同じ動作点になるように、(このキットの売り物の、マイコンを用いた回路で)自動設定されます。

電圧増幅段は、12AT7/ECC81をチャンネルあたり2本用いたもので、「基本的には」2段差動増幅です。各増幅段の接続はCR結合で、直結段はありません。かつては、直結段により低域時定数を減らすことが設計者の腕の見せ所、という時代もあったと思うのですが、設計、測定技術が進歩して、逆に、低域時定数3段でも大丈夫、という感じなのでしょう。初段、ドライバー段、それぞれが共通化ソード回路にLM234を用いた定電流回路が接続されており、差動回路となっています。初段は約0.5mA、ドライバー段は約2.8mAのプレート電流の設定です。興味深いのは、定電流回路になっているにも関わらず、ドライバー段のカソードは電解コンデンサーでバイパスされていることです。ACバランスを考えると、バイパスしないほうがいいように見えるのですが、バイパスしたほうが出力電圧が取れる、などの理由からバイパスしてあるのかもしれません。

負帰還は、出力トランスの2次側から初段の差動回路のマイナス側に戻されており、コンデンサー2個を用いた、少し凝った微分型位相補正が行われています。やや悩ましく感じたのが、初段のグリッドに直列に入った抵抗の値です。回路図には2.2kΩとあるのが、27kΩと(常識的な値より)高いものに変更されています(マニュアルの訂正がオンラインで公開されています)。単なる回路図の間違いか、なんらかの理由で、ある時点で変更されたのか、気になるところです。このグリッド抵抗は、初段のミラー容量(帰還容量)とローパスフィルターを構成するので、帯域制限となる一方、負帰還回路を安定させる方向に作用します。当初は2.2kΩで設計されていて、安定度を上げるために抵抗値を変更したのかもしれません。2.2kΩにしたい誘惑も感じますが、やはり安全側に振って、説明書通りに組み立てるべきでしょう。

B電源は、TU-8200などと同様に、パワーFETによるリップル・フィルターを、4系統に用いたものとなっています。平滑コンデンサーから両チャンネルを独立させており、(出力段がAB級動作なだけに)セパレーションに気を使っている様子が伺えます。電圧増幅段は直流点火で、その回路から自動バイアス回路にも電源が供給されています。自動バイアス回路には正の12Vが供給されており、負電源ではありません。チャージポンプ型のDCDCコンバーターか、アイソレーション型のDCDCコンバーターを用いて負電源を作っているのだろうと思われます。マイコンを用いた自動バイアス回路については、完成品として供給されています。回路図と組み込みのプログラムを知りたいところですが、マニュアルには情報はありません。

回路を見ている段階で、他に気になるのは、抵抗の選択です。増幅段の抵抗は、ほぼすべて1/2W、5%級のカーボン抵抗です。ドライバー段のプレート抵抗は、約200mWの損失があるので、2倍半のマージンがあるとはいえ、温度上昇を考えると、1Wの酸化金属皮膜抵抗にしてもいいように感じます。また、出力間のカソードに入っている電流検知用の抵抗は、1%級で温度係数の低い金属皮膜抵抗を使いたいところです。この辺は、大きな問題ではないのですが、製作時まで悩むことになりそうです。

全体的には、面白いアイデアがあって、(キットとして、部品の種類を減らし作りやすくする、という制約のある中で)きれいに設計された回路だな、と感じました。

2017年1月5日木曜日

Elekit TU-8200


エレキットのTU-8340の発表を見て、久しぶりにアンプを作りたくなりました。TU-8340の前に、手軽に作れそうなTU-8200を、手慣らしを兼ねて作ることにしました。6L6GCシングルという、初心者向きの真空管アンプキットですが、EL34/6CA7/KT-77や、KT-88/6550にも差し替え可能な、ひとつ手元に置いておくと楽しそうなアンプです。

回路は公開されていないので、購入して、見てみるのが楽しみでした。定数などの詳細は書きませんが、文章で説明してみます。電圧増幅回路は12AU7の2段増幅、CR結合で、固定バイアスの6L6GC等の出力管をドライブしています。バイアス回路は、比較的シンプルな、1個のトランジスターによる時定数の大きなフィードバックの定電流回路になっています。この出力管の電流値検知回路を用いて、OPアンプとフォト・カプラーによる過電流保護回路も付いていて、過電流が検出された場合はB電源をカットするようになっています。出力段の動作点は、過去の標準的な回路よりは、やや低電圧、大電流側に振ってあるようですが、シングルアンプなので、この辺が適当なのかもしれません。プレート電流を80mAくらい流しているようなので、オリジナルの6L6よりは、もう少し大きな出力管に合わせてあるのでしょう。基板上のジャンパーで、5極菅接続、UL接続、3極菅接続を切り替えられます。当面は、UL接続で試していますが、EL34や6550では3極菅接続を試すのも面白そうです(出力は下がる代わりに、やや歪みと出力インピーダンスが下がるはずです)。

エレキットらしく、電源回路がしっかりしています。B電源(主電源)は、両チャンネル独立にFETを用いたリップル・フィルターが入っており、さらに電圧増幅段にもチャンネルごと独立のFETによるリップルフィルターが入っています。計4個のパワーFETが用いられています。その代わり(たぶん、FETの負荷を下げる意味もあるのか)デカップリング・キャパシターは小さめです。A電源(ヒーター電源)は、電圧増幅段は直流点火になっています(安定化はされていません)。固定バイアスなので、もちろんC電源(負バイアス電源)も存在しますが、巻線から独立した回路です。このように、電源部が強化されているので、電源ノイズが小さく、真空管アンプとしては、とても静かなアンプになっているようです。

部品

箱を開けて最初に目につく大きな部品、そしてこのキットの最大のポイントは、プリント基板でしょう。これを折り分けて、幾つかの基板を作成します。



電源回路がやや大規模なので、電子部品は多めですが、丁寧に分けて袋詰めされており、親切です。(マスキング・テープによるメモは、自分で付けたものです。)


抵抗類は、大部分が5%級の1/2Wカーボン抵抗で、それより大きいものは酸化金属皮膜抵抗のようです。5%級ということで、バイアス回路などの正確さに不安があったので、バイアス回路に使う抵抗をいくつか測ってみました。だいたい1%誤差に収まっていて、よく揃っているようなので、選別もせずにそのまま使うことにしました。電解コンデンサーは、ほとんどが105℃のものでした。カップリング用のフィルム・キャパシターは、パナソニックのポリプロピレン・キャパシターで、高品質なものです。



出力菅は、Electro-Harmonixブランドの6L6GC(ロシア製)が付属しています。Amtransで検査、選別したものらしいのですが、よく揃っているようです。12AU7は中国製、Shuguangのものです。


出力トランスは、群馬県に本社のある、アテネ電機の製造のようです。


電源トランスは、エレキットでは定番の、北村機電のRコアトランスです。これが、一番重量のある部品です。全般に、しっかりした良い部品が使われています。

組み立て

最初に、主基板を組み立てます。抵抗だけで50以上の点数があり、シングルアンプとは思えない部品数ですが、間違えにくいように部品の配置が工夫されており、説明書もとても分かりやすいので、丁寧に作れば難度は高くないように思います。私は、入力側から回路を確認しながら部品を取り付けましたが、機械的に同じ値の部品を取り付けて行く方が、早いかもしれません。



主基板が出来上がると、こんな感じになります。電源部も含んで、主要回路のほぼ全てがこの基板上にあります。ここでは、説明書の「おすすめ」に従って、電圧増幅段のカソード・デカップリングの電解コンデンサーだけ、有機半導体コンデンサー(パナソニックのOSコン)に交換してあります。

他の基板は、インターフェイスや、切り替えスイッチのために分けてあるようです。


音量ボリュームやスイッチのためののサブ基板が右手前です。ボリュームは100KΩ、Bカーブの小型のものです(アルプス製)。大型のものに交換も可能なようですが、特に問題ないと思うので、キット付属のものをつけています。たぶん、チャンネル同士の誤差(ギャング・エラー)を嫌って(オーディオ用に普通に使われるAカーブではなく)Bカーブにしてあるのだと思いますが、特に使いにくさは感じません。基板の間は全てコネクターを用いるようになっており、ケーブルも付属しているので、ケーブル配線の半田付けは全くありません。


以上の部品をシャーシに組み上げると、こんな感じになります。立体的な構成で、少しアクロバティックな印象もありますが、問題ないようです。このままでも動作させることは可能ですが、高電圧がむき出しになり、危険ではあります。


カバーをつけて、完成した状態です。下の写真はキット付属の真空管、Electro-Harmonixの6L6EHと、Shuguangの12AU7のクローズアップです。真空管の品質に問題はないように感じました。


まとめ

全体に、作り易いながらも作り応えのある、とても楽しめるキットでした。出来上がったものも、ノイズが小さく、コンパクトで真空管の交換が簡単にできる、手元に置いて遊ぶのにぴったりのアンプになりました。音としては、半導体アンプに比べると制動が緩い、よく言えばリラックスした印象があります。出力が小さく歪みも多いはずで、やはり小編成の音楽が良く合いますが、複雑な音楽を聴けるだけのクリアーさも持っているようです。

キット付属の真空管に不満というわけではないのですが、せっかくなので、真空管を交換しました。出力菅は、Svetlanaブランドの6550C(Sロゴ)という現行生産品、電圧増幅管はアメリカ製のビンテージ管、SylvaniaのJAN-5814Aに交換してみました。音の違いはよく分かりませんが、外見の印象はかなり違い、こちらの方が私の好みかもしれません。