2013年5月19日日曜日

小澤隆久著「作りやすい高音質スピーカー: 測定とシミュレーションで高性能を徹底追及」の感想

「MJ無線と実験」に連載されている、小澤隆久さんのスピーカー製作記事が単行本になりました。「作りやすい高音質スピーカー: 測定とシミュレーションで高性能を徹底追及」です。いきなり感想を書くと、とても面白く、多くの事が学べました。スピーカー自作に興味を持つ人には、とても素晴らしい本と思います(もちろん、MJの連載を熟読していて、全て知っているという人を除いて)。


オーディオの本には、一回読んだらそれでいいかな、という感じの情報量の少ない本と、何度も読み返して理解を深めていくべき情報量の多い本とがあります(オーディオには限りませんが)。この本は、後者の本です。少なくとも私には、一回通読しただけでは理解しきれない、多くのアイデア、データ、解析が溢れています。以下に書く事は、現時点で感じている事です。もっと読み込むと、さらに多くのインスピレーションを与えてくれる本、と感じています。

この本の主題のひとつは、QWT(1/4波長共鳴管)スピーカーで、吸音材の使い方を中心に、どのようにまとめて行けば良いかを、いくつもの例をもとに詳述しています。ポートの音圧を計測しながら必要な吸音材の量を決めていくノウハウは、他の本では見た事のないもので、多くの人にとって有用と思います。バスレフ・エンクロージャーの吸音材の処理も同様にできる事も、丁寧に説明されています。オーディオ・ショップで売られている吸音材ではなく、低密度の観賞魚用フィルターを用いた吸音処理が、この本のハイライトのひとつと思います。

また、2ウェイ・スピーカーのネットワークの設計についても、実測やシミュレーションを駆使した設計、逆にテスターだけによる設計法など、いくつものアイデアが追求されており、とても興味深いものがあります。さらに、そうして決定されたネットワークの数値自体も、しっかりした測定結果に裏付けられたもので、そのままコピーしていいかな、と思わせる説得力があります。

とにかく、どの製作、実験にも豊富な測定データが添付されており、測定データから学べる事の多さに(改めて)驚かされます。測定の手間を考えると、頭の下がる思いです。実験、測定、試聴、改良、というサイクルを繰り返して納得のいくものを作っていく、という作業手順それ自体に、学ぶところが多いです。

一方、スピーカー製作の方法については、そのまま参考にできるとは限らない部分もあります。著者の想定している生活環境は、たぶん、地方都市の一戸建ての家に住み、車でホームセンターに行って材料を買う、というものの様です(ユニットなどの主要パーツは、通販なり、遠出して電気街に行って購入するのでしょうけれど)。ですから、ホームセンターで購入できる安価な素材を用い、屋外で電気工具を用いて材料を加工し、電動サンダーで仕上げをする、という事になります。私の様に、都心の狭いマンションに暮して、車を持たないのでホームセンターにも行けない、屋外に使える場所がないので電動工具も使えない、というような人間には実現不可能です。でも、それならそれなりの工夫、やり方がある訳で、この本の問題点、ということでは無いと思います。また、材料の選び方についても、違った感じ方をする人も多いかと思います。でも、それこそ各人の好み、考え方に従って工夫し、作り上げていけば良い事で、そのための多くの知恵がこの本には詰め込まれています。

とりあえず、この本を参考にして、以下のようなスピーカーを作りたくなりました。
  1. 8cmユニット(たぶん、FE83En)を使ったトールボーイのQWTスピーカー(2-1)
  2. MarkAudio Alpair 10を用いたバスレフ・スピーカー(3-1)
  3. M100HR-WとFT200Dの2ウェイ・スピーカー(4-5)
  4. FF225WKを用いたフルレンジ・バスレフ(5-1)
どれも、本書の製作例とは少し異なったものになると思いますが、大いに刺激を受けて類似のものを作りたくなりました。スピーカーを作りたい気持ちを盛り上げてくれる本です。

(ちなみに、私は著者とは全く関係ありません。また、Amazon.co.jpのアフィリエイトもしていません。)

2013年5月3日金曜日

音工房Zの新しいキット:Z601-Modenaの製作(7) -- 仕上げ(そのに)

一旦、部品を全て外して(鬼目ナットまで外して)、仕上げをしました。もう一度240番の紙ヤスリでサンディングしてから、サンディング・シーラーを塗り、完全に乾いてから400番の紙ヤスリで(軽めに)サンディング。その後、ウレタン・ニスを塗って600番でサンディング、ウレタン・ニス、600番でサンディング、もう一回ウレタン・ニスを塗って、いちおう仕上げは終了という事にしました。


バーチ材で、しかも下地をきちんと作っておくと、ニス塗りは全く染み込まず、液体を載せる状態になります。これとサンディングを3回繰り返すと、表面はかなり平滑になります。

色は、例によって、薄い飴色になります。この黄ばんだ感じを避けて、サンディングをした状態の白木の色を出すために、白のポアステインを塗ろうかと最初は考えました。ところが、試し塗りをしたところ、バーチ材とはあまり相性が良くないのか、ちょっと白が浮いた感じになりました(シナ合板だと良い感じになるのですが)。この飴色は年と共に濃くなってくるわけですが、それも「素材の味」のうちでしょう。

完全に乾燥させてから部品を取り付け、取りあえずの完成となります。