いくつか小さな基板を切り出して組み合わせるのですが、主基板だけでもかなり大型です。取扱説明書に従うと、最初に作るのは小さなボリューム基板です。
主基板との接続のために、スズメッキ線を用いるようになっています。次に、出力端子のサブ基板。これは取付ナットを締めるだけです。
主基板にパーツを取り付けるのが、組み立て作業の主要部分になります。特に抵抗を間違えないように、慎重に回路図を追いながら作業をしましたが、数時間で終わりました。主基板は、サイズの大きさに比べて部品数は多くないので、回路規模の割に、あまり部品数が多くは見えません。これは部品面ですが、完成すると裏になります。
真空管が付く表面は、このような感じです。4個のタイトUSソケットと、4個のプラスティック・モールドの9ピン・ミニチュアソケットが見えます。ミニチュアソケットは、歴史と実績のある、QQQブランド(もと中央無線、いまはテクニカル電子)のものです。USソケットの手前に、バイアス状態表示用の3色LEDが付けられているのが見えます。
アンプ(右チャンネル)部分のクローズアップです。0.47μFという大容量のフィルムコンデンサーがカップリングコンデンサーとして8個使われています。パナソニックのポリプロピレン・コンデンサーのようで、高品質なものです。特別な部品は多くありませんが、2段目のカソードのデカップリングコンデンサーは固体半導体コンデンサーが使われています。抵抗はほとんどすべて1/2W、5%級のカーボン抵抗ですが、抵抗値を測ってみると、概ね誤差1%以内に収まっています。出力管の電流検知用の抵抗だけは、念のため1%級の金属皮膜抵抗に交換しました(やや大型です)。奥に見える黒い箱はリレーで、UL接続と三極管接続の切り替えに用いられています。
電源部のクローズアップです。大型のブロックコンデンサーは450V220μFで、両チャンネルそれぞれに用いられています。電解コンデンサーは、すべて国内メーカーの105℃品が用いられており、信頼性重視の設計に見えます。整流回路は2系統(B電源と電源増幅段のヒーター)あり、どちらにも1000V4A規格のブリッジダイオードが用いられています。バイアス回路には、ヒーター電源から電源が供給され、自動バイアス調整基板上で負電圧に変換されているようです。手前には、B電源のリップルフィルターに用いられるパワーMOS-FETが4個見えます。それぞれのFETの向こうに見える小さな部品はツェナーダイオードで、半導体素子の保護用にツェナーダイオードが多用されています。一番手前のスイッチは、UL接続と三極管接続の切り替えスイッチです。
AC電源入力部は、別の小さな基板になっています。ACインレットから電源スイッチまで基板になっており、ケーブル配線をしなくていいように配慮されています。複数のコネクターパターンが基板に用意されているのは、複数の電源電圧に対応するためです。
ケースにこれらの基板を組み込むと、ほぼ完成です。
中央に見える紫色の基板が、自動バイアス調整用のサブ基板です。これは完成品で供給され、カバーの基板も付いているので、内部の回路は見えません。ブラックボックス状態です。
ケースへの組み込みで気づいたのは、ケースが頑丈で重量級なことです。組み込むトランスが重いからだと思いますが、カバーまで含めると、ずいぶん重量があります。素材は鉄なのですが、厚さをノギスで測ったところ、1.7mmくらいありました。また、ナットが全く用いられていない代わりに、Sタイトネジという、タッピングビスの一種が多用されています。これを厚い鉄シャーシにねじ込むには、けっこう力が必要です。最初は普通のドライバーで頑張っていたのですが、途中からは、電動ドライバーを用いることにしました。一度ねじ込んでタップが切られれば、それ以降は普通のドライバーで大丈夫です。
あとは、トランス類を組み込んでカバーを付け、真空管を差して調整を済ませれば完成です。