2013年8月28日水曜日

音工房Zの新しいキット:Z601-Modenaの製作(8) 使用状況と測定

Z601-Modenaが完成してから、しばらく現在のメインスピーカーであるZ800-FW168HRの上に置いて音を出していたのですが、さすがにクオリティに差がありすぎるし、少し距離があると量感も不足し、あまり音を出す機会が無くなってしまいました。やはり、8cmのドライバーですし、ニアフィールド・モニターとしての用途が向いている様です。そこで、パソコンのモニターの両脇において、仕事をしながら音楽を聴くためのスピーカーとして使ってみる事にしました。


こんな感じで、以前作った小さなスタンドの上に置いて使っています。(上に置いてあるのは、O'Reillyのカレンダーです。)

試聴距離は50cmから1mという所で、本当にニアフィールドで、出す音量も小さなものです。こういう用途には8cmドライバーはぴったりで、低音の量感も感じられ、ボーカルの生々しさも良好です。音の傾向については、ポリプロピレンの振動板には、やはりメタル系、あるいはパルプ系の振動板のユニットとは異なる穏やかさがあるように感じます。私の好みの方向とは多少違うのですが、悪くはありません。

 この設置状態で、少し測定をしてみました。ピンクノイズを入力して、iPhone上のAudio Toolsで測定しました。今回は、RTA(real time analyzer)ではなく、FFT(fast Fourier transform)を用いています。まず、ドライバーの近くで測定した結果が以下のグラフです。


10kHz以上の特性は、マイクの癖がありそうなので当てにはなりませんが、100Hzから8KHz辺りまでは、かなりフラットでいい感じです。100Hz以下はダラ下がりですが、8cmのドライバーですから妥当なところでしょう。30Hz以下の音圧は、空調などのバックグラウンド・ノイズです。

次のグラフは、ダクト付近での音圧です。(ダクトにほとんど突っ込んで測定しているので、絶対値は意味がなく、グラフの形だけが意味があります。)


これを見ると、50Hzから250Hzくらいまでの音圧が出ており、効果的に低域が補強されていることが分かります。ただ、中低域、つまり100Hz前後はユニット出力とかぶっており、やや強調されているかも知れません。また、意外なほど中域、700Hzから1.2KHz辺りの音がダクトから漏れています。このような音漏れは、ドライバーからの直接音と干渉するのであまり望ましくありません。今回はダブルバスレフで、このような中域の音漏れは少ないはずなのですが、予想以上に大きいので驚きました。これを減らすには、もっと吸音材を入れる事になりますが、すると低域の共振も下がってくるはずで、悩ましいところです。また、そのためには、低密度の吸音材を第2音室に詰めるのが可能性として考えられますが、ダブルバスレフなので、第2音室にこれから吸音材を入れるのは困難で、諦めざるを得ません。第1音室にも低密度の吸音材を詰めてみて、特性を調べてみても良いかも知れません。

いろいろ課題もありますが、ニアフィールドで使用するには、低域も豊かで、なかなか楽しいスピーカーです。ドライバーを、アルミ・マグネシウム合金、あるいはパルプ・コーンのものに交換するのも簡単なので、そのうちに交換してみるかも知れません。かなり雰囲気の違うシステムになりそうです。
(以上)

2013年8月27日火曜日

Markaudio Alpair 10 バスレフ・システムの製作 (3) 取りあえずの完成

箱が出来たので、細かい取り付け作業をして、取りあえずの完成となります。

端子のハンダ付けをします。今回は、ターミナル板は丸形の物を用いました。 スピーカー側は、取り外しできる端子にハンダ付けをするので、手軽です。


吸音材は、最初は少なめにしました。薄手のウールの吸音材、20cmx17cmを2枚、それから低密度の観賞魚フィルター用ろ過マットを3枚下部に入れる事にしました。


吸音材を入れた内部の様子です。



最後にユニットの取り付けです。取り付けには、付属していた4mmのタッピング・ビスを用いました。3mmの六角レンチを用いるので、かなり強固に固定できます。位置決め、仮止めしてからバリを削り、改めて取り付けをしました。ほぼ、フレームとバッフル面は面一になります。



完成して、音が出せる状態になりました。下に見える、音工房Zのキット、Z800-FW168HRよりも、ほんの少し、大きな箱になりました。


 ウェブ・ページのデータシートによると、最初の100時間は極く小音量で 鳴らすように、という指定があるので、しばらくは小さな音でエイジングし、その後、測定、吸音材の調整などに入る予定です。(材料が届いてからここまでに、ひと月ほどかかっています。)

2013年8月26日月曜日

Markaudio Alpair 10 バスレフ・システムの製作 (2) ボックスの製作 

東急ハンズから届いた材料は、このような感じになります。


まず最初に、2枚重ねのバッフルを張り合わせます。


側板と底板、天板、補強仕切り板、それに補強材を張り合わせているところです。接合は全て木工用ボンドを用い、クランプで圧着して固定しました。13cmのフルレンジドライバー向けの箱としては、かなり強度の高いものと思います。


10本のクランプを使い、バッフルと背板を圧着して張り合わせ、箱は完成です。


ダクトは、HI-VP50という、呼び径50mm(実効内径51mm、外径60mm)の耐衝撃・肉厚・塩化ビニール・パイプを100mmの長さにカットして用いました。(普通に手に入りやすいのは排水用のやや薄いVU50で、その場合は外径が異なります。)


組み立てた箱にヤスリがけした物が次の写真です。簡易型の面取りカンナを用いて、バッフルの側面には12mm、上下面には5mmの面取りをしました。


そのあと、ポアステインのオーク色で着色、 サンディングシーラーを塗ってサンディング、数回のウレタン・ニスの重ね塗りをして、仕上げとしました。


2013年8月25日日曜日

Markaudio Alpair 10 バスレフ・システムの製作 (1) 設計

評価の高いMarkaudioの ドライバーを使ってスピーカーシステムを製作する事にしました。選んだドライバーは、Alpair 10という、実効振動板半径が約5cmの、比較的上級のユニットです(10という型番は、有効振動板直径が10cmである事から来ていると思われます)。 普通に言えば、13cmのフルレンジ・ドライバーという事になると思いますが、フレームの外径は165mmもあります。


Alpair 10Mの振動板はアルミ・マグネシウム合金で、色はゴールドとグレイがありますが、今回入手したのはグレイのものです。ちょうど、バージョンアップの時期と重なり、Alpair 10v2を入手する予定が、Aplair 10Mv3となりました。「10」が「10M」と変更になったのは、パルプコーンのAlpair 10Pも発売になったためで、フレームは共通なので、同じボックスでパルプコーンのものに交換する事も可能です。

面白い事に、ドライバー自身には全くデータや説明書が付いてきません。付属品は、取り付け用のタッピングビスのみです。データは、ウェブページで見る、という事の様です。今回は、新しいバージョンなので、10Mv3については、まだMarkaudioのウェブページにはデータはなく、販売店のウェブページにある情報だけなのですが、旧バージョンのデータで設計しても問題はなさそうです。

ボックスの設計は、Markaudioのウェブページに掲載されている「黄金比バスレフ・ボックス」の奥行きを深くして、容積を約21ℓにしたものとしました。spedによるシュミレーションは以下のようになります:



ダクトの長さは実効長で112mm、計算上のfdは約43Hzです。ボックスの素材は21mm厚のシナ合板、バッフルのみは(落とし込みのために)12mmの シナ合板の2枚重ねとし、十分な強度を出す事を意図しました。内部には補強の仕切り板を、天板、底板には補強を入れます。側面からの断面図は以下のようになります。バッフルの厚みが24mmなので、外形寸法は450x292x265(HWD)となります。


板取は、以下のようになります。21mm厚、910x910mm、300x910mmのシナ合板、12mm厚、600x910mmのシナ合板から以下のように切り出す事にして、東急ハンズ渋谷店に依頼しました。仕切り板の穴は(価格との兼ね合いで)円形にしました。幅30mmの板は、天板と底板の補強です。