スピーカー・ユニットは、「使って音を聞かなければ分からない」というのが正論でしょうけれども、とりあえずデータを見て、その性格について考えてみたいと思います。最初は、8センチ・ユニットです。
フォステクスの、代表的な8センチ・フルレンジユニットのスペックを表にしてみました。
ユニット名 | f0 | m0 | Q0 | 音圧レベル | マグネット重量 |
FF85WK | 115Hz | 2g | 0.55 | 86.5dB | 187g |
FF85K(旧) | 125Hz | 1.8g | 0.47 | 88dB | 228.3g |
FE83En | 165Hz | 1.53g | 0.84 | 88dB | 140g |
FE87E(旧) | 140Hz | 1.4g | 0.92 | 89dB | 76.4g |
DCU-F081PP(参考) | 103Hz | 2.036g | 0.46(Qts) | 83dB | 130g |
DCU-F101W(参考) | 68Hz | 3.45g | 0.751(Qts) | 82dB | 117g |
参考として、PARC Audioの8cmフルレンジ、DCU-F081PPとDCU-F101Wのデータも載せました。フォステクスの8cmユニットの a(実効振動半径)は、すべて3cmです。(旧)とあるのは、旧モデルです。取り付け穴の寸法などは、FF85Kの切欠きを除いて、すべて同じで大丈夫そうです。
FF85WKは、フォステクスのユニットの中ではいちばんm0が大きく、f0が低いです。能率もやや低めで、バスレフ向きに設計されている事が良く分かります。一方、マグネットの重量、従って磁気回路のエネルギーについては、FF85Kよりは減っているものの、FE系のユニットよりは大きく、8cmユニットにしては、Q0も低い方です。強力な磁気回路と重めの振動系、というFFシリーズのポリシーを守ったなかで、バスレフ寄りにチューニングを振って来た事が伺えます。
FF85KやFEシリーズよりは小さなボックスで、低めのポート・チューニングが出来る事になります。推奨エンクロージャーもそうなっています。FF85Kの推奨エンクロージャーは容量5.45L、fd=108Hzなのに対して、FF85WKの推奨エンクロージャーは容量3.48L、fd=92Hzとなっています。FE83Enの推奨エンクロージャーは、容量6.87L、fd=83Hzで、かなり大きくなります。
PARC Audioのユニットと比べると、ウッドコーンのDCU-F101Wはフォステクスのユニットのどれに比べても振動系が重く、f0もずっと低くて、はるかにマイルドなユニットです。ポリプロピレンコーンのDCU-081PPは、振動系も軽めなので、FFシリーズにやや近い特性に見えます。
FF85WKの周波数特性を見てみると、10KHzあたりにピークも見え、アルミ・センターキャップのキャラクターがあるのかも知れませんが、FF85Kと比べると、やや 穏やかになっているようにも見えます。 FEシリーズとはやや異なる性格のユニットですが、バックロードにもけっこう使えそうなスペックです。FF85WKは、FF85Kよりは少し「中庸」になった、でも強力なユニット、という印象を受けます。