2010年11月30日火曜日

Fostex FF-WK シリーズ:スペックからの考察 (1) 8cmユニット編

フォステクスから、FFシリーズのニューモデルが出る事は、しばらく前から知られていましたが、2010年11月のカタログにデータが載せられているのを見つけました。FExx7シリーズが無くなり、FFシリーズも旧モデルの在庫も無くなって、フォステクスのカタログからバスレフ向きのユニットが無くなった時期でもあり、「待望の新製品」と言う所でしょう。2011年1月末発売となっています。

スピーカー・ユニットは、「使って音を聞かなければ分からない」というのが正論でしょうけれども、とりあえずデータを見て、その性格について考えてみたいと思います。最初は、8センチ・ユニットです。

フォステクスの、代表的な8センチ・フルレンジユニットのスペックを表にしてみました。

ユニット名 f0 m0 Q0 音圧レベル マグネット重量
FF85WK 115Hz 2g 0.55 86.5dB 187g
FF85K(旧) 125Hz 1.8g 0.47 88dB228.3g
FE83En 165Hz 1.53g 0.84 88dB 140g
FE87E(旧) 140Hz 1.4g 0.92 89dB76.4g
DCU-F081PP(参考) 103Hz 2.036g 0.46(Qts) 83dB130g
DCU-F101W(参考) 68Hz 3.45g 0.751(Qts) 82dB117g

参考として、PARC Audioの8cmフルレンジ、DCU-F081PPとDCU-F101Wのデータも載せました。フォステクスの8cmユニットの a(実効振動半径)は、すべて3cmです。(旧)とあるのは、旧モデルです。取り付け穴の寸法などは、FF85Kの切欠きを除いて、すべて同じで大丈夫そうです。

FF85WKは、フォステクスのユニットの中ではいちばんm0が大きく、f0が低いです。能率もやや低めで、バスレフ向きに設計されている事が良く分かります。一方、マグネットの重量、従って磁気回路のエネルギーについては、FF85Kよりは減っているものの、FE系のユニットよりは大きく、8cmユニットにしては、Q0も低い方です。強力な磁気回路と重めの振動系、というFFシリーズのポリシーを守ったなかで、バスレフ寄りにチューニングを振って来た事が伺えます。

FF85KやFEシリーズよりは小さなボックスで、低めのポート・チューニングが出来る事になります。推奨エンクロージャーもそうなっています。FF85Kの推奨エンクロージャーは容量5.45L、fd=108Hzなのに対して、FF85WKの推奨エンクロージャーは容量3.48L、fd=92Hzとなっています。FE83Enの推奨エンクロージャーは、容量6.87L、fd=83Hzで、かなり大きくなります。

PARC Audioのユニットと比べると、ウッドコーンのDCU-F101Wはフォステクスのユニットのどれに比べても振動系が重く、f0もずっと低くて、はるかにマイルドなユニットです。ポリプロピレンコーンのDCU-081PPは、振動系も軽めなので、FFシリーズにやや近い特性に見えます。

FF85WKの周波数特性を見てみると、10KHzあたりにピークも見え、アルミ・センターキャップのキャラクターがあるのかも知れませんが、FF85Kと比べると、やや 穏やかになっているようにも見えます。 FEシリーズとはやや異なる性格のユニットですが、バックロードにもけっこう使えそうなスペックです。FF85WKは、FF85Kよりは少し「中庸」になった、でも強力なユニット、という印象を受けます。