2010年12月2日木曜日

Fostex FF-WK シリーズ:スペックからの考察 (3) 12cmユニット編

12センチ・フルレンジユニットというのは、フォステクスのカタログには沢山あり、選択に迷うほどです。現行のユニットと、代表的な旧ユニットのスペックを表にしてみます。

ユニット名 f0 m0 Q0 音圧レベル マグネット重量
FF125WK 67Hz 5.0g 0.42 89dB 388g
FF125K(旧) 70Hz 4.0g 0.25 92dB 420g
FE126En 83Hz 2.8g 0.3 93dB 440g
FE127E(旧) 70Hz 2.9g 0.43 91dB160g
FX120 65Hz 5.3g 0.46 89dB 330g
F120A 65Hz 4.7g 0.45 89dB 211g(アルニコ)
DCU-F131PP(参考) 62.33Hz 5.693g 0.444(Qts) 90dB 400g
DCU-F131W(参考) 48.6Hz 7.487g 0.545(Qts) 87dB 400g

参考に、PARC Audioの13センチ・フルレンジユニット2機種のデータも載せました。フォステクスの12センチ・ユニットの a(実効振動半径)は、すべて4.6cmです。(旧)とあるのは、旧モデルです。取り付け穴の寸法は、だいたい全部同じです。

こう比べてみると、FF125WKと、FX120、F120Aの類似性が明確に分かります。FF125WKは、やや磁気回路が強力で、Q0が低めな感じですが、違いは10%程度ですから、個体差の範囲でしょう。 もともと、FX120とF120Aは、磁気回路の素材(フェライトとアルニコ)を除けば殆ど同じスペックで、同じボックスで共用できる感じでしたが、もうひとつボックスが共用できるユニットが増えた感があります。もっとも、価格的には、FF125WKに比べてFX120は約2倍、F120Aはさらに2倍、と大きく違います。高域特性などを見ると、「普及ユニット」と「高級ユニット」の違いがあるのかな、という印象も受けますが、実際には聴いてみて、好みで決まるレベルかも知れません。F120Aはアルニコ・マグネットという事で、別格の感じがあります。

これらと比べると、FF125K(旧)とFE126Enは、よく似た性格のオーバーダンピング・ユニットです。FF125Kの方が振動系が重くf0も低いのですが、Q0はむしろ低くなっており、ハイ上がりで、どう考えても、どちらもバックロード向きのユニットです(バスレフ向きではありません)。FE126Eが出て、FF125Kの存在理由が無くなって、こういう形のモデルチェンジになったのかな、という印象もあります。

FE127Eは、軽い振動系に弱めの磁気回路の組み合わせで、Q0も手頃で、(よく知られているように)むしろバスレフ向きです。しかし、上の三つのユニットの、強力な磁気回路に重めの振動系、低いf0とは対照的な性格で、大きめのボックスが必要なユニットでしょう。なぜFE127Eがカタログから無くなったのか、という気もしますが、コイズミ無線で、オリジナルの形で後継機(FE127E2)を販売しているようです。

PARC Audioのユニットと比べてみると、DCU-F131PPとFF125WK(したがってFX120、F120A)はよく似た特性のユニットです。一方、DCU-F131Wは振動系が重く、f0もはるかに低く、まるでウーファーのようなユニットです。

推奨エンクロージャーに関しては、以前のフォステクスの(12cmユニット共通の)推奨エンクロージャーは容量9L、fd=74Hzだったのに対し、FF125WKの推奨エンクロージャーは容量は同じくらいで、ポートはfd=57Hzと低いチューニングになっています。共通エンクロージャーは、FEシリーズに合わせてあったのかもしれません。

こう見てみると、FX120の存在理由が希薄になっている感じがします。FF125WKは、FX120を置き換えるユニットになるのかも知れません。