2010年12月4日土曜日

Fostex FF-WK シリーズ:スペックからの考察 (5) 20cmユニット編

20cmフルレンジというのは、フルレンジとしては大口径で、ツイーターが必要とされるのが普通と思います。フォステクスの新旧20cmフルレンジ・ユニットのスペックを比較してみましょう。

ユニット名 f0 m0 Q0 音圧レベル マグネット重量
FF225WK 44Hz 18.4g 0.35 93dB 1067g
FF225K(旧) 40Hz 17.3g 0.2 96dB 1067g
FE206En 45Hz 12.2g 0.19 96dB 1067g
FE207E(旧) 40Hz 15g 0.26 95dB707g
FE204(旧) 45Hz 14.6g 0.23 95dB 848g
FE208EΣ 42Hz 13.3g 0.18 97dB 1408.7g
F200A 30Hz 18.6g 0.33 90dB 607g(アルニコ)
LE8T-H(参考) 45Hz 16g 0.56(Qts) 89dB 2800g(注)

参考に、JBLの名器とされるLE8Tのスペックも調べてみました。(注)マグネット重量の所に2800gと入れてありますが、これは“Magnet Assembly Weight”ということで、たぶん、ヨークなどの重量も含まれているのでしょう。マグネットサイズから予測すると800gくらいだろうと思いますし、スペックからしても、特に強力な磁気回路ではなさそうです。

FF225WKは、シリーズの他のユニットと同様に、旧FFシリーズに比べて振動系がやや重く、Q0を高めにチューニングしている、という事のようです。マグネットが同じサイズの割にQ0はずいぶん大きくなっているのですが、エッジやダンパー、ボイスコイルの辺りで大幅に変えた所があるのでしょうか? 音圧レベルも3dB/Wも減っており、低域は少しマイルドになっていそうです。高域のレスポンスには、いくつかピークが見えますが、超高域までは(もちろん)伸びていません。

FE204(あるいは、性格の似たFE207E)は、長岡鉄男氏のフロア型スピーカーの作例の中で、重低音ならぬ、「軽低音」を出すためのフルレンジ・ウーファーとして多用されていました。それらのユニットと比べると、FF225WKは、f0は同じくらいですが振動系もそこそこに重く、Q0もやや高めで、フルレンジ・ウーファーとして使い易そうです。ダブル使いで2ウェイを作るのにも、ぴったりな感じですし、FE207Eも廃番になった現在では、貴重なユニットだと思います。

一方、LE8Tと比べてみると、まだまだダンピングの強いユニットに見えます。灰山アキラ氏は、「入門・スピーカー自作ガイド」(電波新聞社、2008)の中で、FF225Kを用いた2ウェイスピーカを試作して、外見は似ているけれど、「LE8Tとは対照的な性格の持ち主でした」と書かれています。FF225WKは、もう少しLE8T寄りになったかもしれないけれど、まだまだハイスピードな強力ユニットでしょう。上のリストから、現行でLE8Tの代わりになりそうなユニットを探すと、f0が30Hzと飛び抜けて低い、F200Aでしょう。でも、外見はずいぶん違いますし、価格的にも、かつてのLE8T並みに「高嶺の花」という感じがします。指定箱も45Lくらいと、LE8Tと近い使い方が指定されているようにも見えますし、大きめなボックスでどんな音がするのか、聞いてみたい気がします。

FF225WKの推奨エンクロージャーは、(少し不思議な気もしますが)FF225Kの推奨エンクロージャーの45Lから27Lと、大幅に小さくなっていて、一方、ポートの共鳴周波数は44Hzから39Hzへと、やや低くなっています。このサイズなら、サブロク合板1枚で2本作れて、経済的です。置き場所も見つけやすいし、世情に合った、現実的な設計なのかも知れません。