2010年12月3日金曜日

Fostex FF-WK シリーズ:スペックからの考察 (4) 16cmユニット編

16センチ・フルレンジ、ロクハン(6.5インチ)というのは、かつてはフルレンジ・スピーカーの代名詞でした。三菱のP-610や、パイオニアのPE-16などのシングルコーン・フルレンジが、オーディオの入門スピーカーとして広く使われていました。これらは、いずれも軽い振動系に弱めの磁気回路で、大きなエンクロージャーを必要とするスピーカーでした。現在は、こういうスピーカーは主流から外れていますが、16センチというのがフルレンジ・スピーカーのひとつの典型である事は変わっていないと思います。では、新しいFF165WKは、他のユニットに比べてどういう性格を持つのでしょうか。

ユニット名 f0 m0 Q0 音圧レベル マグネット重量
FF165WK 50Hz 9.5g 0.34 92dB 848g
FF165K(旧) 40Hz 7.8g 0.2 94dB 600g
FE166En 53Hz 6.8g 0.25 94dB 600g
FE167E(旧) 50Hz 6.9g 0.31 94dB362g
FE168EΣ 51Hz 8.7g 0.26 94.5dB 721g
DCU-F171P(参考) 35.65Hz 12.236g 0.209(Qts) 91dB 650g
P-610(参考) 80Hz 6.5g 0.8 94dB ?

参考に、PARC Audioの17センチ・フルレンジユニットと、ダイヤトーンのP-610のデータも載せました。フォステクスの16センチ・ユニットの a(有効振動半径)は、FE168EΣ以外は6.5cm、FE168EΣは6.0cm。取り付け寸法も、FE168EΣだけ少し異なる以外は、他は同じです。

フォステクスの16センチ・フルレンジユニットは、FE167Eがややマグネットが小さい以外は、どれも強力な磁気回路を持っている事が分かります。その中でも、FF165WKはいちばん大きなマグネットを用いています。m0もいちばん大きいのですが、FE168EΣとそれほど違う訳ではありません。それなのに、Q0が大きいのは、エッジやダンパーの違いから来るものかも知れません。何れにせよ、FF165WKは、強力な磁気回路を持ち、重めの振動系でバスレフ向きにチューニングした、という事なのでしょうが、Q0が0.34というのは、決して大きくはありません。f0が50Hzというのも、それほど低くはありません。「FF165Kよりはバスレフ寄りにチューニングしたけれど、やっぱり強力なオーバーダンピング・ユニット」という印象を受けます。それでも、(僕のロクハンのイメージからは)やや大きめのバスレフ箱に入れて鳴らしてみたい気がします。FF165WKの推奨エンクロージャーの容量は17.6L、fd=54Hzとなっています。FF165Kの推奨エンクロージャーは大きめで、容量約25L、fd=56Hzでしたので、小さめのボックスにした事になります。

それにしても、弱めの磁気回路を持つとされるFE167Eでも、かつてのロクハンから比べると、ずっとオーバーダンピング型です。P-610などは、 0.8前後のQ0を持っています。だから、平面バッフルや大型の密閉箱でもバランスが取れたわけです。もう少し、バリエーションがあってもいい感じもしますが、現在でもPARC Audioなどの他のメーカーもあるわけですし、これがFostexの持ち味なのでしょう。